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  • 江戸時代の火葬、〈日本の礼儀と習慣のスケッチ〉より1867年出版

火葬とは

火葬(かそう)とは、葬送の一手段として遺体を焼却することである。また、遺体の焼却を伴う葬儀全体も指す。
 日本では、火葬の後の「焼骨」は骨壷に収(拾)骨され、土中に埋葬(法律的には「焼骨の埋蔵」)されるか、納骨堂等に収蔵されることになる(墓地、埋葬等に関する法律第2条)。したがって火葬は「葬儀の手段の一つ」というよりも、葬儀の一過程であるという考え方もある。または安定化、減容化処理の方法と言うことも出来る。 散骨される場合もあるが、現在では条例等により禁止・規制している地方公共団体も出現している。

日本における火葬

日本における火葬は仏教と共に伝わったという説が有力とされている。

 『続日本紀』によると、日本で最初に火葬された人は僧道昭であり、文武天皇4年(700年)のことであるとされる。また天皇で最初に火葬されたのは持統天皇(702年)である。
 ただし、近年ではそれに先行して火葬が行なわれていた可能性も強く指摘されている。古墳の様式のひとつに「かまど塚」「横穴式木芯粘土室」などと呼ばれる様式のものがあり、その中には火葬が行なわれた痕跡があるものが認められる。それらは6世紀後半から出現しており、研究が進めば日本における火葬史は100年以上遡ると考えられる。
 仏教徒も含めて、近世までの主流は火葬よりも棺桶を使った土葬であり、一部には鳥葬に代表される曝葬の習慣もあった。遺体という大量の水分を含んだ物質を焼骨に変えるには、大量の薪と、効率よく焼くための技術が求められる。そのため、火葬は費用がかかる葬儀様式であった。
 近代に入ると、明治政府は明治6年(1873年)に神道による挙国一致を目指した神仏分離令に関連して火葬禁止令を布告したが、仏教徒からの反発や衛生面の理由から明治8年(1875年)には禁止令を廃止している。その後火葬技術が進歩したこともあり、近現代の日本では火葬が飛躍的に普及し、ほぼ100%の火葬率である。

 現在、離島や山間部の住民を除いてほとんど全ての遺体は火葬される。その理由としては以下の点が挙げられる。

・公衆衛生の観点から土葬よりも衛生的であり、伝染病等で死んだ場合はもちろんだが、通常の死亡原因による埋葬であっても、土中の微生物による腐敗では、埋葬地周辺域に長期に亘って腐敗菌が残存するため、衛生上広域な土地を必要とする。

・無宗教である人が多く、埋葬の方法にこだわりがない。現代の日本では、火葬がごく普遍的なものとなっており、世間体にも無難なものとして受け入れられる。

・仏教では、仏陀の故事にちなんで火葬が尊ばれており、特に浄土真宗などでは火葬を強く推進してきたという経緯があった。

・都市に人口が集中しており、その都市部では土葬で埋葬するために必要な土地が確保することができない。

・墓はイエを単位として考える人が多い。そのため、先祖と同じ墓に入れるようにするため火葬する。

  しかし日本においても火葬を忌む場合はある 神道家の一部には火葬を仏教徒の残虐な葬儀法として禁忌する思想がある。 琉球における洗骨葬のような地域的な文化への圧迫と受け止められる場合があるが、現在の沖縄ではほぼ火葬である。 世界的にみて、イスラームなど、火葬を禁忌とする戒律を有する文化が少なくない。近年では国内の日本人・外国人の中でムスリムの人口が増加しており、火葬が主流の日本国内で暮らす彼らは、甲州市など全国に数箇所しかない土葬が可能な施設にあたらなければならない。

 日本では、墓地、埋葬等に関する法律第3条の規定により、原則として、死体(もしくは妊娠7箇月以上の胎児)は、死後(もしくは死産後)24時間以内は火葬してはならないとされている(但し、伝染病予防法で定められていた疾病による死亡の場合はこの限りでない)。また、火葬を行なう場合には、当該死体に係る死亡届等を受理した市町村長の許可が必要であり(墓地、埋葬等に関する法律第5条)、この許可を受けずに火葬した場合には、墓地、埋葬等に関する法律違反となるほか(「罰則」規定同法第21条)、刑法第190条「死体遺棄・死体損壊罪」に問われる可能性もある。
 なお、法律上で土葬など火葬以外の方法が禁じられているわけではないが、環境衛生面から行政は火葬を奨励しており、特に東京都や大阪府などでは、条例で土葬は禁じられている。

国外における火葬

ヒンドゥー教
 仏教と関係が深いヒンドゥー教でも、最も多い葬送手段は火葬である。通常、遺体は棺桶に入れず、布でくるまれる。火葬は火葬場か墓地でされるが、いずれにしても屋外で、薪(火葬用のもの)で焼かれる。遺骨は川に散骨する。水葬同様、ガンジス川の人気が高い。 仏陀の教えにしたがっていえば、火葬は、遺骸を火によって速やかに毀損せしめることで、死んだ直後の霊魂による自らの肉体への未練を断ち切るとともに、立ち昇る煙とともに霊魂を天上界に送ることで成仏を促す行為であるという。 もっとも現代の日本においては、火葬場特有の高い煙突から立ち昇る、悪臭を伴う煙が近隣住民から疎まれるため、煙突を有さずに煙も出さない最新型の火葬炉を設置する火葬場が多くなってきている。
 しかし、世界的に見れば火葬は必ずしも普通の習慣ではない。

儒教
 儒教では火葬は身体の毀損行為であり、中国の歴代王朝の法典においても禁止が明記されている(中純夫「樗村沈ラにおける華夷観念と小中華思想」「京都府立大学学術報告人文・社会」2003年12月ISSN:13433946)。
 ただ、儒教の国といわれる大韓民国でも、火葬が増えている。これは、日本同様狭い国土に人口が急増し、ソウル首都圏など大都市で土葬を行うための土地を確保できなくなっていることが理由となっている。このため、大都市部での土葬は、宗教指導者など一部の人に限られており、近年では2009年2月に死去した韓国人初のキリスト教枢機卿・金壽煥、同年8月に死去した元大統領・金大中の例があるくらいである。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教
 またユダヤ教およびこれに起源を持つキリスト教、イスラームでは、最後の審判における死者の復活の教義を持ち、この際もとの体が必要と考えられているため、火葬への禁忌が強い。
 特にキリスト教は、19世紀にはじめて火葬が行われるとプロイセン公会議を開いて火葬の禁止を決めた。しかし、その直後に黙認状態となり最近では火葬も増えている。アメリカ合衆国での火葬率は、プロテスタント保守派の間で禁忌が強いこともあり20%強にとどまるといわれるものの、同じキリスト教圏にあるイギリスをはじめとする国々の多くでは、いずれも70%程度の火葬率である。

 これらの宗教圏でも、遺体を焼くことは死者への侮辱であり、魂を地獄へ落とす行為といわれているからである。しかし、このイスラームの場合も、宗派によって温度差はあり、世俗的、温和的宗派の場合には許容する姿勢を見せる場合もあるともいわれる。
 火葬が増えている国のほとんどは、日本や韓国のように人口が急増する一方で、狭い国土故に土葬するための土地を十分に確保できないという現実的な問題に直面している場合である。宗教に限らなければ、もともと火葬を習慣としているインドなども現在10億人以上の人口を抱えていることから、似たような問題を抱えているといえる。


(wikipediaフリー百科事典より)